SODI5 最後の室蘭本線/C57

 



1975年12月14日。

蒸気機関車ファンには避けて通ることのできない日付でしょう。
この日、103年続いた蒸気機関車による旅客列車が終わりを迎えました。

全国津々浦々の鉄ちゃんたちや沿線の住民で3万人を超える人出だったと言われ、盛大なセレモニーも行われ、報道ヘリまでやってくる騒動となったようです。

キングレコードからも「最後のSL旅客列車 C57135室蘭本線を行く」というタイトルでこの日を題材にしたLPが発売されていたり、その他のオムニバスにも収録されていたり、たくさんの録音が残されたようです。

その中でもこのLPが特筆すべきなのは、ソニーから3つの取材班が動員され、前日の入区や点検から録音を行っていたことだと思います。当時ソニーの名誉会長であった井深大さんが国鉄の理事を務めていたことが影響していたのかもしれません。それによって前述のキングレコードよりも遥かに濃い内容となっています。特に前夜の点検のシーンでは、「最後だからもう少し綺麗にしようか」といった淋しさが溢れる声も聞かれ、サウンドドキュメンタリーとしての完成度を高めています。

最後のシーンで、解錠の音に続いて機関士さんのインタビューがフェードインするという演出がされていたり、C57135が汽笛と共に走り去るところまでがしっかり収録されていたりするところから、作り込みに余念が無いのが伝わってきます。

録音に関しては、蒸気機関車録音の名手と言われる小川正雄さんからの音源提供もありますが、現地での手応えはなかなかに厳しいものだったようです。客車内は超満員で騒然としているし、屋外では追走するヘリの音を拾ってしまって汽笛やドレンの音に被ってしまうという嘆き節が解説書に書かれています。ですが、当時を知る人が少なくなった今となっては、現場の様子を記録した重要な要素だと思います。

その解説書は、井深大さんの寄稿や構成の保柳健さんらが当時の様子を綴っていて、読み物としても面白く興味深いものになっています。井深さんが国鉄を散々に云ったのに鉄道好きだったために理事を引き受けてしまった、というエピソードなどが綴られています。

セレモニーの挨拶がカットされていたり、ソニーだけでも膨大な録音がされたことが想像できますが、今となってはそのすべてを聴くことができないのが残念でなりません。それでも、この完成度のLPを残せたことは素晴らしいことだと思いますし、蒸気機関車ファンのみなさんにおすすめしたい1枚です。

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