JX-1012 さらば日本の蒸気機関車2 さいはての炭山に車輪はきしむ



北海道で炭鉱に関係する蒸気機関車といえば、美唄鉄道の4110型を思い浮かべる方が多いと思います。僕も以前訪問しました。当時は札沼線の撮影が中心だったことと、生憎の雨で足早に過ぎてしまいました。その後、水曜どうでしょうの聖地探訪で渡道した際に、ミスターこと鈴井貴之さんが保存の寄付に参加しておられたことを知って驚いたのが記憶に新しいです。

その4110型が急勾配を登ってくる音から始まります。ドラフト音がゆっくりと近づいてくるにつれて、とても力強いどっしりとした印象が湧いてきます。右から左へゆっくりと目の前を通過していくのがはっきりとわかるとても立体的ですばらしい音です。

つづいて並走しての録音と運転台添乗音。投炭の音がとてもリアル。汽笛一声、しばらくは快調に飛ばすも、途中から勾配に差し掛かったのが手に取るようにわかるゆっくりとした音に変わります。ドッドッと一歩一歩力強く上り、少しづつ加速していく。貨客混合列車だそうだけど、音は全く貨物のそれ。D51や8620型とは趣が異なる走行音です。

A面後半は明治鉱業昭和鉱業所の10形17号。録音された昭和43年当時に現役最古だった機関車。古典機らしい可愛い汽笛とは裏腹に、軽快ながらも剛健さを感じさせる低い音から長く現場を支えた堅牢さが伺えます。今では聞くことのできない貴重な音。

B面では変わった音を聞くことができます。夕張鉄道の10型は、燃焼効率を上げるために焚口戸を半開きにしていたそうで、ビュービューと通風する音がします。風が通るというような爽やかな音ではなく、暴風のような爆音。また、平和駅には後押し専用の機関車が待機していたそうで、石炭満載の列車をスイッチバックで助走を取り一気に上り勾配を駆けあがります。遥か彼方で汽笛の音がしたかと思うと物凄いドラフト音が一気に近づいてきます。その際に文字通り”後ろから押す”そうで、解説書によれば、途中で自動的に引き離されて駅に戻ってくるらしい。連結は…してないのだろうか。

後半はアメリカ製”B6”の2500形機関車。三井鉱山美唄鉱業での録音。明治38年製の機関車が貨車の入換作業をする音が聞けます。汽笛は張りがあって元気な印象を受けまが、正直かなり玄人志向な録音…ですが、実はこの機関車は名古屋市科学館で保存され、某市長によっていろいろと物議を醸しているハノーファー製B6と同型機なのです。どのような形になるかわかりませんが、歓迎される復活とはならなさそうなのが辛いですね。録音当時のような元気な汽笛が聞けるといいのですが。

さらば日本の蒸気機関車は関沢新一さん監修の全12作シリーズで、関沢さんか解説書に寄せた文章からその想いが伝わってきます。冒頭のような邂逅と、古典機好きクラウス好きが相まっていきなり2作目から始めてしまいました。録音が行われた昭和43年と言えばヨンサントオ。無煙化促進の時。そこであえて私鉄や専用線の機関車を追ったということだけでも、その蒸熱が伝わってきます。

実に濃厚なレコード、シリーズだと思います。

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