ULP-1003 泰緬鉄道 最後のSL/タイ鉄道の旅





このレコードを初めて見たとき「こんなマニアックなものがあるのか!」と思ったと同時に、C5644の同僚たちが動いていた時の音が残っていることに驚きました。

Side1ではSL740号機(C5649)のキャブでの添乗録音、Side2ではバンコクからナムトークまでの鉄道旅を要所で録音したもの、という構成。Side1でSLを中心に聴かせてSide2では泰緬鉄道という環境を聴かせようという趣旨が伝わってくる内容です。
木造橋を渡るDL機関車の添乗録音では、ギシギシと軋む橋を慎重に走らせているのが伝わってきます。また、どちらもタイの民族音楽で始まって終わるという演出で、異国情緒が溢れるとてもいい構成だと思いました。
SLの状態は良くなかったようですが、元気な汽笛がとても綺麗な音で聴けました。
解説書の内容もとても良く練られていて写真も貴重なものばかり。資料としての価値も大きいと思いました。

このSLは1978年の時点でカンチャナブリー駅に廃車留置されているのが確認されているようです。録音された日付が不明ですが、現地取材の内容や発売が1976年のようなので、最晩年に録音されたものと推測されます。

帯に構成として利根常昭さんの名前が記されていますが、録音と撮影、文章も担当されています。

利根常昭さんは高知県出身のジャズピアニストだそうで、上京して作詞作曲編曲活動をされ、和田アキ子や森山良子など多くの歌手に楽曲提供をされたのち、帰郷して後進の指導をされているそうです。そのような経歴の方が作った鉄道のレコードというのは珍しいかもしれません。そのせいか、単なるドキュメンタリーよりも物語性が高いような気がしました。

1970年代といえば、動力近代化計画によって日本中からSLが消え、大手レコード会社がこぞって国内の人気機関車を録音したLPを発売しました。そんな中で、現地取材を敢行し資料を集め、国外に視点を向ける企画を実行するというのはすごいことだと思います。

歴史の底に沈んでしまうにはとても惜しいレコードだと思いました。


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