Railroad Record Club

海外の鉄道レコードは出会い頭で購入することが多くこれと決めて探しているものは無かったのですが、TRANSACORDのピーター・ハンドフォードやJS&Mの賤機喜美に出会ったことで個人レーベルに興味が湧き、面白そうなレーベルを探してみようとdiscogsを眺めていて出会ったのがRailroad Record Clubでした。

検索をかけたところ「The Trolley Dodger」というブログを発見。David Sadowskiという人が交通機関の研究をしているサイトで、その友人のKenneth GearがRailroad Record Clubについての研究をゲスト投稿した記事でした。

Railroad Record Clubについて
Railroad Record Clubのマスタテープや資料の収集①
Railroad Record Clubのマスタテープや資料の収集②
Railroad Record Clubのディスコグラフィー①
Railroad Record Clubのディスコグラフィー②

主な記事は以上の5投稿でそれぞれがとても長いです(笑)しかもまだ新しい記事が出てくるようで、底なしの探究心をお持ちのようです。

Kenneth Gearが私財を投じてRailroad Record Clubの製品やマスタテープ、録音に関する資料などを収集し、それらから得られる情報を繋ぎ合わせて、クラブの設立者William A. Steventonやクラブの経過と製品リストを詳らかにした記事と、収集の過程が詳細に書かれた記事です。

Kenneth Gearは収集のために相当な時間、労力、資金を投じ、それによって明らかになった内容はとても興味深く、さらにはマスタテープをデジタル化してCDを制作してしまう行動力には驚嘆しました。

また、クラブの設立者William A. Steventonの行動力も凄まじいと感じました。彼は録音のために15州を旅し、その先々で出会った同志たちと音源を共有するため、オープンリールに録音した音源に自前のイントロダクションを追加して、自宅でアセテートレコードを自作して販売したそうです。

33.1/3rpmのレコードが主流になり始めた時、材料や機材の入手が困難になると考えて、RCAの工場に製造を委託することにしたそうです。その結果、金属製マスター盤の製造やジャケット等の材料費といった前払いが発生するようになり、料金前払いの会員制クラブという販売方法を思いついたようです。それがRailroad Record Clubの公式な設立となりました。1957年から1983年の26年間で43作が製作され、米国全土だけでなくニュージーランド、オーストラリア、イギリス、カナダなど世界に約200名の会員がいたそうです。考え方を変えると、それぞれ約200枚ほどしか流通していないとも言えるので、非常に入手困難です。

その途中、1973年にRCAから製造停止を通告されマスター盤を破棄されてしまい、別会社と契約はできたもののリマスタリングを余儀なくされ、一度停止した前払い制度を再度導入することになりました。人気作から少しづつ再販を行いながら新作も手掛け、1983年を最後に新作は発売されませんでしたが、リマスタリングは1990年まで続き、彼は40作の10インチレコードのうち17作を12インチで再販したのち、1993年に亡くなりました。

この他にも、当時の機材や音源、ジャケットについてなど面白い話がたくさん掲載されていて読み応え抜群の記事でした。

日本ではなかなかお目にかからないレコードですが、円盤鉄の始祖とも言える鉄道録音黎明期の作品ですので、何とか聴いてみたいと思います。

(2023.12.19追記)
The Trolley Dodgerのメンバーから「Living with Steam」というポッドキャストを教えていただきました。Railroad Record Clubや、シカゴの高架鉄道などアメリカの鉄道史についてのポッドキャストが聴けます。一部ですが、William A. Steventonの音源が聴けます。


LP
No.4 Baltimore & Ohio
No.7 Norfolk and Western Illinois Central
SP-4 Chicago, South Shore and South Bend

10"
No.18 Chicago, North Shore & Milwaukee
No.20 Chicago & Illinois Midland . New York




No.4
Baltimore & Ohio
2024.2.1



No.20
Chicago & Illinois Midland . New York
2023.12.16
※ジャケット裏にサインがあり、The Trolley Dodgerのメンバーに問い合わせたところ本人のもので間違いないとのこと。そして、第2版以降は版画に付け足して転写していたそうで、これは貴重な初版だそうです。







SP-4
Chicago, South Shore and South Bend
2023.12.16
※解説書の色が付いている部分は落書きです


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